夏の思い出 ― 弘前で受け取った一球の優しさ
9月になり、すっかり秋めいてきました。あんなに暑かった夏が嘘のようですね。
皆さんにとって、この夏一番の思い出は何でしたか?
私の思い出の一つは、弘前で観戦した巨人戦。
子どもの頃は、スポーツといえば野球。野球といえば巨人。そんな時代でしたよね。
今は昔ほど熱心なファンではありません。
それでも「チケットが取れるなら行ってみたいな」と思っていたところ、
なんと念願のチケットが当選。しかもバックネット裏、巨人側のSS席です。
席は前から2列目ss席。一塁側ベンチのすぐ上で、選手の表情までよく見えます。
地方球場ならではの距離感に、試合が始まる前から上がるテンション。

試合そのものも十分面白かったのですが、一番印象に残ったのは、思いがけない出来事でした。
たしかダルベック選手だったと思います。フライアウトで捕ったボールをスタンドへ投げ込んだんです。
ボールは私よりずっと後ろへ飛んでいったので、全然気にしてなかったんです。
ところが、そのボールが後ろの方で誰かに弾かれたのか、ポーンと目の前へ飛び込んできたんです。
すかさず無意識に手を伸ばし、幸運にも鷲掴みしました。
「やった!」そう思った次の瞬間、手が滑ってしまい、ボールは私の手元をすり抜けてしまいました。
コロコロと転がっていった先で止まったのは、隣のおじさんの足元。
手に入れたと思ったものを逃すと、不思議と悔しさは倍になりますね。
すると、そのおじさんが私の方を見て、一言。
「はい、どうぞ。」
そう言って、ボールを手渡してくれたんです。
思わず「いいんですか?」と聞き返したくなるくらい、自然な優しさでした。
もちろん、私が物欲しそうに見ていたわけでは…たぶん、ないと思います(笑)。
でも、あの日の一番の思い出は、巨人戦の勝敗ではなく、見ず知らずの人から受け取ったその優しさでした。

夏の終わりに思い返すと、このボールを見るたびに弘前の巨人戦と、
おじさんの「はい、どうぞ。」という一言がよみがえります。

