「ナビが壊れたら私は終わる。方向音痴の告白」
私は、筋金入りの方向音痴です。
どれくらい筋金入りかというと、以前、勤めていた会社から自宅に帰る道を間違えたことがあるくらいです。
しかも一回だけではありません。
そんな私が仕事で現場に向かうとき、頼りにしているのはただひとつ。
カーナビ。
これがなければ、私は現場にたどり着く自信がありません。
正確に言うと、たどり着ける可能性もゼロではないが、無駄に遠回りする確率は上がります。
しかも何度も通った現場でも、出発点が変わった瞬間に私はパニックになります。
「え、こっちから行くとどうなるの」
「この道、さっきも見た気がするけど気のせい」
「ナビの“右です”って、どの右」
頭の中は常にこんな感じになっています。

特に厄介なのは、現場打合せの時間が迫っているときです。
ただでさえ方向音痴なのに、時間がないと焦りが倍増し、脳内は真っ白になってしまいます。
そんなとき、ナビの案内が神の声に聞こえます。
人を車に乗せているときは、絶対に悟られてはならないという謎の使命感が発動してしまいます。
その結果、私は驚くほど不自然な声で「このルート、あえてこっちから行くんですよ」と、うそぶきます。
同乗者が「この道で合ってます?」と聞いてくると、心拍数は跳ね上がるのが分かります。
こんな時こそ私は平然と「大丈夫ですよ。任せておいてください」と答えますが、その時の同乗者の顔を見ることはできません。
裏返してみれば方向音痴は、私の人生にちょっとしたスリルと新鮮味をもたらしてくれるんです。
「そう思えば、方向音痴も悪くない。」と自分に言い聞かせています。

